図面の読み方(入門)
図面の読み方(入門)
はじめに
入社した時に様々覚えることがあり、四苦八苦することがあります。
そのひとつが図面の読み方です。
大三角法とは
世の中のものづくりは大きく設計と製造のふたつで成り立っています。
構想する人がいて、それを再現する人でモノというのはできあがります。
製造においても設計図を書いて、見てそれに従い、加工したり組立を行います。
しかし、世の中はすべて立体でできていますので、図面のように平べったい絵を見た時、ひとつの方向のみだと側面はどう加工すればよいのか、上の部分はどんな形をしているのかを理解できません。それらを解決できるのが、この第三角法です。
この第三角法は、世の中、当たり前のように使われていて、それを見ながら加工したりモノを組立てたりしています。
第三角法とは、製図で用いられる正投影図法の一つで、通常は、正面・平面・側面の三面図で構成されます。 正投影図法とは、立体のものを平面上に表す方法の一つで、物の形状を正確に表すことができる長所があります。
ようするに立体のモノをそれぞれ正面、上、横の3方向から撮った写真をこの一枚の設計図に貼りつけているイメージです。
第三角法 立体図
JISの第三角法
用語:第三角法
定義:一つの対象物の主投影図のまわりに、その対象物のその他の五つの投影図のいくつか又はすべてを配置して描く正投影。主投影図を基準にして、その他の投影図は、次のように配置する。
・上側からの投影図は、上側に置く。 ・下側からの投影図は、下側に置く。
・左側からの投影図は、左側に置く。 ・右側からの投影図は、右側に置く。
・裏側からの投影図は、右側又は左側に置く。
第三角法といっても三方向のみとは限りませんが、設計する場合にそれぞれの面の配置は決まっているようです。
ここでは最初に話した通り、基本的な正面、平面、側面の三方向を学んでいきたいと思います。
まずはなぜ第三角法が必要なのかを実際に見てみましょう。
正面から見ると同じ四角形でしたが、側面と平面は異なります。
これでどちらが正方形でどちらが長方形かわかりますね!
では次にこちらの図面を見てみましょう。
今度は正面を隠しています。どんな形だと思いますか?
一見すると側面も平面からも同じなので、正面も正方形だと思いますよね。
円は図面で立体に表すことができないため、平べったい長方形に見えます。
なので、この場合は正面から見ないと形を把握できません。
このように第三角法を用いることにより、ほとんどの形状を表すことができます。
これが第三角法です。
次に少しだけ難しい形を見ていきましょう。
このように複雑な形をしたものも、自分が実際にそれぞれの方向から写真を撮る時に、どんな景色になるのかを想像すると良いかもしれません。
さらに複雑な形をしたものなどは、第三角法だけで表すのは難しいですが、基本的にはこの第三角法で形状のほとんどが理解できます。
寸法について
図面の寸法とは、「長さ」のことです。 寸法が無い状態だと「長さ」が分かりませんので、建物の高さも横幅も分かりません。 これでは施工のしようがありません。
図面に対し、寸法を記入することにより、図面が表すものの長さを理解することができます。
日本では長さを表現する際「cm」(センチメートル)が一般的ですが、建設業や製造業では基本的に「mm」(ミリメートル)で表現します。
20cmなら200mm、4mなら4000mmです。
建築や製造は非常に繊細ですので、ミリ単位で様々なことを調節しなければならないのです。図面には単位の記載は無く、数字のみが書かれています。
これら全ては「ミリ」ですので、間違えないようにしましょう。この図面では数字が書いてあるのが寸法です。青い線は寸法線といいます。
実際に使われている図面
また板の全長、たて×よこを表す形として、以下の図のように記載していることが多いです。こちらもよく覚えておきましょう。
180×120と書かれている場合は 縦180mm 横120mmということになります。
日常や学校ではセンチを多用することが多く、ミリはほとんど使われませんでした。
しかし、製造業ではより細かな加工や調整などの精密作業などもあり、数ミリ違うだけでも、機器やその他製品にも多大な影響を及ぼすことがあります。
図面を見て、寸法を見る際は、センチとミリの読み間違いには十分気を付けましょう。
図面の様々な記号と線
これまで、第三角法と寸法について学びました。
単純な形であるならば、以上の二つで充分ですが、複雑な形になったり、そこから加工をしたりするので、そういうわけにはいきません。
そこで寸法以外に図面で使用する記号や線を使って、もっと深く理解していきましょう。
実線と破線
最初の第三角法では直接目で見える線のみを書きました。これらの線は実線(じっせん)といいます。 しかし、これだけでは見えない部分がどうなっているのかは分かりません。裏側には穴が開いているかもしれませんし、この図のように、実は目では見えないところに何かあるかもしれません。
そのような場合に、実際には見えないが、透視してみると線が見えると仮定したものを破線(はせん)又は隠れ線(かくれせん)といいます。破線は線が一定間隔で途切れたような形をしています。
最初にイメージはしづらいかもしれませんが、図面で破線を見たときに正面から見てどこに何があるかの基準を決めるのがコツです。
中心線
図面の中心線(ちゅうしんせん)とは、図形や構造物の中心を表す線です。建築物の基礎、柱、製造においても「中心をおさえる」ことが大切な部材には中心線を描きます。
社内では赤い線で示すことが多いです。
実際の設計図面
加工穴と円の記号
図面にただ単に、円の絵を描いているだけでは、穴あけ加工なのか、円柱なのか、どの位置でどんな穴をあけるのかが分かりません。
そこで加工穴や円柱に使われる記号について学んでいきましょう。
大きな区分で、穴あけ加工とタップ加工の二種類のドリルを使った加工方法があります。
図面上では、タップ加工の場合はネジの直径サイズを表すM、穴あけ加工や円柱の直径を示す場合はΦ(ファイ)の補助記号を使って表します。
図面で例えばM6と書いてある場合は、直径6mmのねじ穴のことを示しています。
図面上で表すと下図のように二重の線が描かれたものとなっています。
二重線になっているのはネジの直径(外側)と下穴の直径(内側)を表しています。
※下穴とはタップ加工する前の下準備としてあいている穴です
ちなみにM6の下穴は直径5mmのドリルで穴を開けるのが推奨されています。
各M(タップ穴)に対してそれぞれ下穴の基準は決まっています。
次にΦ6と書いてある場合は、直径6 mmの穴を開ける場合と、円の直径を示す場合があります。
穴あけ加工の場合は、下記の図のように通常のドリルを使い、そのまま穴あけを行うことを示します。
Φ6のみの記載の場合はそのまま貫通する穴を開けます。※詳細は下記
円柱の直径を示す場合は下記の図の通りの記号で示します。
ちなみにRと表記されている場合は半径となります。
また、図面上で同じ加工穴を開ける場合、省略する記号として
加工数×ドリル径(例①4×Φ5 例②6×M3 )
貫通させずに指定の深さまでの加工を指示したい場合はドリル径 深さ〇〇又はD=〇〇(例①Φ5 深さ10 例②Φ5 D=10 )を。
厚みと長さの記号
材料の寸法を表す記号としてtとLがあります。
tというのはThickness( シックネス)の略で 厚み を示します。厚みの定義は難しいですが、基本的には平べったい平面に対して、垂直方向の長さを厚みといいます。
次に長さを表す記号としてL( ℓ )があります。
LというのはLength(レングス)の略で全長を表します。
シャフトなどの棒状のものに対して使用されることが多いです。
その他加工の寸法補助記号
Ra:表面粗さを表す単位で(アールエー)と呼びます。 値が小さくなると表面に粗さがなく仕上がりが良いとされます。例:Ra1.6
C:面取り幅を表す単位で(シー)と呼びます。金属や樹脂製の加工品は手が切らないように角を落とす加工が施されています。C2と記されていた場合は2mmの幅で角を落とす意味とされています。面取りはほとんどの商品や材料に施しています。
皿ざぐり:皿ビスの頭を埋めるための加工方法。皿ビスの頭の直径よりも大きい直径で穴を開ける。Φ〇で示す。
深ざぐり(ざぐり):ねじの頭を埋めるための加工方法。〇キリ Φ〇 深さ〇で表します。
他にも製図記号はたくさんありますが、基本的に使われるのは以上の記号などです。
仕事をしていくうちに様々な記号を見つけることがあります。