この項ではボール盤の正しい操作方法を説明します。

ボール盤を安全に扱っていくには手順を守らなければなりません。

絶対的な手順はございませんが、当社の作業手順を是非ご参考にして下さい。

図面の確認

これは場合にもよりますが、加工を始めるにあたって、

どこにどんな穴をあけるのかを把握していなければなりません。

※当社で使われている部品図面の一部

特に製造業は細かい部品や微妙なサイズ違いの部品などを多く扱うことがあります。また細かい指定や特殊な記号などを使うこともあります。図面を理解しておくためには一度製図や設計を学んでおくとより良いでしょう。

加工手順の決定

“大は小を兼ねる”と言いますが、必ずしもその通りとは限りません。

ボール盤で穴あけ加工する場合は、小さいサイズのドリルから使用することをお勧めします。

例えば、お風呂の栓などのような特定の穴のサイズが必要な場合、一度あけてしまった穴は戻ることも小さくなることもありません。

最悪、すべて最初からやり直しになってしまいます。

また、ぴったりサイズの蓋をする場合などは、あらかじめそれよりも小さいサイズの先端工具から使って、徐々に大きくし、微調整していく方が尚良いです。

工作物へのけがきと取り付け

ボール盤をよく扱う熟練者達でも、直接品物に穴をあけることはしません。

測定器具や道具などを使用し、どこに穴をあけるかを前もって印などをつけて決めています。

ハイトゲージの器具を使ってけがきの作業をする様子

[けがき]というのは、工作物の加工する位置に線を引いたり、穴の形状・寸法、その位置を示すために、工作物上に直線、円、中心を示す作業のことをいいます。

センターポンチを打ってくぼみをつけることや鉛筆などで線を書き記すことも、けがき作業と言われています。

ドリルのセット

まず、電源がOFFになっているのと電源プラグを抜いていることを確認しましょう。

これはプラグを差し込んだ時の巻き込み事故が起こらないようにするためです。

電源はOFFに!

プラグも抜いておく!

使用するドリルの径に合わせて、 ドリルチャックの側面を回してドリルビットのシャンク部分にチャックを固定させる。

チャックハンドルで3か所それぞれ均等に締め付ける

※均等に締め付けを行わないと、軸がぶれてしまうため

ベルトカバーを開ける。

ベルト固定用のノブを回して固定を解除する。

ベルト用のレバーを下げて、ベルトを緩めた状態にする。

ベルトの張りが緩くなっているのを確認後、ベルトを横から引っ張り、溝から外す。

ドリルの大きさや材料によって速度を変える。

ベルトを速度に合ったプーリーの溝に入れる。

※ベルトは平行の状態にして入れること

ハンドルを下げたままで、ノブで固定させる。

位置合わせ

コラム固定クランプを(ゆる)める

左右にテーブルを動かし作業位置を調整する。 貫通穴等をあける場合はテーブルにあらかじめ開いている穴を利用しましょう。

テーブル固定クランプも緩める。

テーブルを回転させて位置を合わせる

貫通穴の場合

テーブルの穴を利用し、上下左右にドリルが当たらないように実際に確認する。

品物の高さなども見ておくこと

位置調整ができたら各固定ハンドルで動かないようにする

シャコ万力で固定する場合

テーブルの表裏の平面箇所で挟み込んでしっかり固定させること。

※必要に応じて品物を傷つけないように布や柔らかい素材などで保護してください。

バイスで固定する場合

位置決めを行ったらテーブルの穴にボルトを通し、固定させる。

固定ハンドルの反対側にあるテーブル高さ調節用ハンドルを回してドリルとテーブルの高さを調節する。

※先端工具や品物をぶつけないように気を付ける

ハンドルでドリルを上げ下げし、ドリルの着地地点と穴あけ位置が合っているかを確認する。

ここで穴あけ位置がズレている場合は、テーブルを左右に動かし、微調整を行う。 品物とドリル先端が離れすぎている場合は、高さ調整用ハンドルで高さの位置調整を行う。

位置が確定したら、それぞれ固定クランプを締め付けて動かないようにする。

深さの決定

深さ調整前に固定ノブを緩めておく。

ドリル先端を品物に当てる。

※強く当て過ぎると品物が凹んでしまうので注意

深さ設定前に気を付けるポイント!

ドリルの種類、径によって先端から直径が出る地点が変わります

例えば、長さ10mmの同じ直径のピンを埋込む場合、10mmの深さを設定しても3mm分は直径が出ていないので、そのままピンを入れても3mm外に飛び出してしまいます。

ピンをぴったり埋込みたい場合は、その先端分も考慮しなければなりません。

※例では3mmですが、ドリルによって変わります

ドリル先端を品物に当てた状態で深さ調整のコマを回していく。

任意の深さを設定する。

固定ノブをしっかり締めて、セット完了!

※締めたあとは送りハンドルを放しても大丈夫です

穴あけ加工

安全を確認したら、プラグを差し込みます。

電源ONを押し、ドリルが回転します。

オイラー(油差し)で加工地点とドリル先端に切削油をつける。

※刷毛の場合は毛が絡まる危険があるので品物だけに塗布

ハンドルを慎重に降ろしていき、加工地点からドリルが横ずれしていないか確認する。

穴と先端の中心がズレている状態でそのまま加工を進めてしまうと、ドリルが折れてしまうので、要確認!

特に径が細いドリルは折れやすいので、ズレが大きい場合はテーブルや品物を動かして、修正しましょう。

ハンドルが止まるところまで降ろしていく。

力を入れすぎず、スムーズに切るように操作する。

※ドリルを上げる時はゆっくり上げていくこと

通常の切削だと切り粉が絡まりやすく、伸びた切り粉が飛んでくることがある。(下図)

銅の加工中

ハンドルを降ろすときに一定の力のリズムをつけると切り粉が絡まりにくくなる!

注意として、ハンドルは押したまま押す力を変えるだけ!

ハンドルを握っている手は離してはいけない。

少しの力加減で切り粉にも違いが出る

加工後

加工後は速やかに電源をOFFにし、ドリル回転を止める。

ドリル回転停止を確認後、品物を固定から外す。

作業が完了したら、電源プラグを抜いておく。

電源プラグ取り外し後は掃除をしましょう!

必ず寸法確認をしよう!

同じ品物を複数個切削する時の注意事項として

必ず、初回の1つ目は寸法確認をしておきましょう!

50個品物を加工する時に最初の寸法ミスに気付かず、そのまま50個穴をあけ終わった後に寸法が違っているミスに気付くという事がありました。

最初の1つ目で気付くのと最後に50個気付くのとでは損失は全く違うので、これから加工に従事する方はここらのポイントを意識しておくといいでしょう。